斎田 英次

第10回 カッセル市のエコハウス団地


今回はカッセル市の郊外にあるエコロジカルな住宅団地をご紹介します。

この団地はドイツのエコハウスづくりのなかでも草分け的存在と言われ、今でも世界中からエコロジー建築を目指すプロや行政がたくさん視察に訪れます。日本からも毎年数多くの人達が訪れるそうです。

ドイツでは、家も含めた建物に対して市などの行政が建築可能な範囲や規模を指定した計画で法的な強制力もつ「地区詳細計画」(通称Bプランと呼ぶそうです)を立てます。
日本でも似たようなことはあるのですが、ドイツのこのBプランはかなり厳しい。「それは私的な権利の話じゃないか!」と思われるところまで踏み込みます。
例えば看板、外観や色、使用する材料・・・・

このことが、魅力ある街並みにつながっているようです。結果として観光客などの交流人口も増えて、経済効果もあるという好循環が生まれています。

公の権利と私的の権利。
うーん考えさせられますね。何でもありの街並みがいいか悪いか考えてみる必要がありそうですよね。

さて話を戻しますがこの団地ではエコロジーの要素をこのBプランにかなり詳細に盛りこんでいます。

実際の団地づくりは第3期まであって次のような特徴があります。

■第1期 最もエコロジーに忠実な団地を目指しました。1984年に着工し 翌年完成しました。土地は分譲で自由設計です。

■第2期 同じくエコロジーに忠実に1987年着工し 1988年竣工しました。これも土地は分譲で自由設計可能です。

■第3期 ハウジングメーカーの設計・施工による建売住宅となりました。基本的なコンセプトはある程度守られていますが、第1,2期とは明らかに異なり、一般向けになってきています。

さて,何がエコロジーに忠実かというあたりですが、教えてもらっただけでも、建てるにあたって取り組むべき24個の指針がありました。詳しく知りたい人はご一報いただくとして例えば次のようなものまで決めてあります。

@「つる性の植物を壁面にはわせ、夏の遮熱を図る」 

うーん、日本でも最近は壁面緑化技術が進んできていますね・・・・・・・ドイツの気候ならではとも言えますけれど。

A「トイレの水には雨水を利用できるシステムを導入し、上水消費の低減を図る」

雨水利用システムは必須・・・私が行ったときは雨降りで、様々な形の屋根から降った雨が上手にタンクにためられていく。何だか家が生き物のような感じがしました。

B「DIYの余地を残すため、できるだけ簡単な工法による設計を行う」

これは等身大の技術、ローテクと呼んでも良いと思います。これはエコロジー建築の要素としてとても大切にされています。(日本の大工さんが見たら、「こんな仕事をしていていいのかい?」と疑問に思うほど大雑把なところもありますが・・・・)

一つ一つの要素は、凄い技術ではないんでしょうけれどねえ。この指針のなかで家を建てるプロも、すむ側である家族も様々な工夫を実践するわけです。実際この団地は決して画一的ではなく統一感の中にも各家庭の個性はあるのです。
自然を意識した街路も素敵で、歩いてみたいと思わせる心地良さを感じます。

土曜日の午後3時、ビンタ−ガーデン(コンサバトリーというかサンルーム)で、お茶を楽しむ家族がいました。実に絵になる一瞬でした。

このビンタ−ガーデンはこの団地のどこでも見られるのですが、住まいのなかで重要な役割を持っています。
この地域の気候は、雪は多くありませんが北海道に似ています。だから冬にはこのサンルームで太陽の熱を十分に蓄え、家にその暖かさをつかえるような工夫をしたり、換気をここから行うようにして家の熱を逃がさないようにしたりしています。そして、そこでティータイムを楽しむ。
経済性やエコロジー、そして文化や健康も感じる家づくりでした。

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