斎田 英次

第6回 「暖房エネルギーが1/35!! 超低エネルギー住宅プレッックス@」


スイスのチューリッヒ郊外にある集合住宅「プレックス」1995年に建設されました。
なんとこの集合住宅の使用エネルギー(冷暖房、給湯、電気など)35軒分が、スイスの平均的家庭の1軒分だそうです。(室内温度を22Cとして計算)さぞ、すごい容姿で怪物のような家だろうと勝手に悶々と想像を膨らませ現地に行きました。
それがどっこい。
その集合住宅につくと建物前の道を馬に乗った女性がパカパカと歩いてきた。その道の南側は小川、牧草地?と続く穏やかな風景、周辺には昔ながらの民家も点在し実にのどか。【左写真】

しかし、その住宅はとても近代的で、瀟洒な佇まい。色もブルーを基調に風景との調和が取られています。南面に大きく取られた窓、その前に広がる個性豊かで、広々とした庭がとても素敵です。
さて、この家々は何を目指したのか?
そしてどんなしかけをしたのだろうか?
ふむふむ。設計した建築家の説明を聞く。

目標はまったく一次エネルギーを使用しない住宅を今ある技術(市場に出回っているもの)で達成しようというもの。行政からの助成もあるようでした。
入り口には行政の定めた省エネルギーな住宅であるという証、銀の紋章「ミネルギーマーク」が太陽の光を浴び輝いている!!
【写真上】
まず気持ち良さそう〜と眺めていた南面の大きなガラス窓。【写真右】
これは、パッシブソーラーと言われ、太陽の恵み(光、熱などのエネルギー)を機械を使わずできるだけ有効に取り込もうとするワザです。

他に太陽熱利用も行っていてそこで集めた熱は80%以上の給湯や暖房に利用しているのだそう。庭先には筒のようなものが一本飛び出ていました。
Q「あれはなんだ??」
A「クールチューブという地熱を利用する技術です」
地下100メートルの深さより地熱というエネルギーをもってきてそれを冬はヒートポンプという技術で熱に換えて使い、夏は地下の涼しい空気をつかって室内を冷やすのだそうです。【写真左】

すごい!!自然の力を徹底的に利用するその意気込みと実行力。
この家は太陽、土の中の熱エネルギーを、空気の流れを絶妙に計算、デザインし、そのときの外の環境に応じ、快適な環境を作り出す装置を隠しもっているのです。

今風に言えば「なんということでしょう」としか言いようがないほど驚嘆しました。
しかも、家を外から見ても、室内に入ってもそこに、我慢を強いられている感じは全然ありません。もちろんシックハウスの心配をする建材は極力使わないとのこととんでもない容姿の怪物住宅を想像していた愚かな私は良い意味で裏切られました。
つづく


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