斎田 英次

第7回 「暖房エネルギーが1/35!! 超低エネルギー住宅プレッックスA」


スイスのエコロジー集合住宅を代表するプレックス建物自体は地下1階地上2階が基本プランです。
自然の恵みをいかに効率的に取り入れるかについて大まかな仕組みは分かりました。でも取り入れた熱や空気は、出さなければなりません。暖かい空気も冷たい空気も家へ空気を取り入れっぱなしということはない。もしあるのなら漏れているか、窓を開けているかどちらかでしょう。

ヨーロッパの住まいで、冬寒い地域は概して断熱という熱を遮断する機能を重視します。
この住宅も31センチの厚みの断熱材を入れているとのこと、取り入れた熱は逃がさない!!という徹底ぶりが伺えます。しかも、この家では南面の窓は大きくそのほかは極力窓をつくっていないんです。
出入りできるところが最低限あり、他の東、北、西はほとんど窓がない。あっても小さい窓があるだけです。

なんか空気が淀みそう・・・・・どこで窓を空けて換気をするんだろうとキョロキョロ。

建築家の話をきくと「熱を取り入れたらその熱をどこかに逃がさないように上手に家を循環させて、尚且つ新鮮な空気を部屋中に届けなくてはいけない。換気をおこたる建築家は犯罪者である!」と自信たっぷり。

なるほど、換気の仕組みがあるんだな。
どこに?と家中をうろうろ。
いろんなところに穴を空けると熱が奪われるから計画的に換気の経路をデザインしています。各部屋に排気口はあるものの、外気に直結した穴は見当たらない。回りまわって、トイレから外に出すらしいです。うーん徹底的。理にかなってるような気もしました。

しかし驚いたことが一つ。レンジフードのことです。

私たちは料理するとレンジフードのスイッチを入れ、その熱や臭い、空気をどこか外壁の穴から出ていますよね。たまに「お隣さんが魚焼いているな」とか分かったりします。

でもこのプレックスにはレンジフードの排気口がありません。活性炭のフィルターで浄化して室内に戻すんですって。

機能的で瀟洒なキッチン。しかしフードに吸い込まれた空気はまた室内に還る

建築家談:
「スイス人は家で炒め物料理はあまりしないから」

ひえ〜。それは分かるけど・・・・いや、そうですか・・・
としか言い様がありませんでした。

熱を上手に取り込んだらそれを逃がさずできるだけ有効に使う。
ふむふむ。それは分かるな。新鮮な空気をたえず部屋中に送らなければならない。これもよく分かる。そして、この取り組みが私たち共通のテーマである省エネルギーで経済的な暮らしにつながっています。

私は思いました。このプレックスは、スイスのような気候風土、文化、生活習慣にフィットした心地よい住まいのあり方なんだと。

季節の移ろいを家にいながら楽しんだり、窓を開け庭先の木々を通る風を室内で感じ取る私たち日本人の住まい観は大事にしたいものです。

さて、一軒分の広さとだいたいの価格ですが一軒が200u(約3割の土地を含む)
650000フラン〜810000フランだそうです。

今回で3軒目のご紹介ですが、これまでの三つの家に共通していることがあります。お気づきでしょうか。「集まってコンパクトに住む」効率的にエネルギーを使う=無駄のないシステムとしての家を目指すと自然と家の形はシンプルにコンパクトになるようです。このプレックスも一軒でやったら、トンでもない初期コストが施主を追い詰めることでしょう。

コンパクトに住むこと、それはエコロジーの重要な要素です。
集まって住むこと自体。
マンションにお住まいの皆さん、マンションに住むことはそれだけでエコロジーなのです。


※このコラムに関する、ご意見・ご感想がございましたら、アイリスタまでお寄せください。
コラムのもくじへ戻る
 
ITOCHU Urban Community co.,ltd.