川が氾濫し堤防が決壊するときは、一瞬時計が止まったかのように静寂が周囲を支配する。そして耳が立ち上がるかのような緊張が走り、瞬時に全身が押しつぶされる。それは轟音とともに襲い来る水の猛威を、あたかも事前に予期していたかのように己を納得させる。
少年のころ。大雨がくると、長沼町を囲む千歳川や夕張川がしばしば氾濫した。
町の有線放送が増水の危険性を知らせ、地元の大人たちの交じり、父や兄たちが土嚢を積み上げる。しかし堤防は決壊した。田畑は水につかり、一面海となった。子供たちは高台にある小学校に避難した。家々をイカダで行き来した。
その時被災した家族はもとより、地域の経済は困窮したはずだ。それなのに、私には避難した同級生の明るく元気な笑みしか思い出せない。つらいことがたくさんあったはずなのに、大人たちは強くたくましい。
今、長期にわたり経済が低迷する。イジメや行き場の果てがよく見えない種々の暴走を見聞きする。その度に、少年時代に目にした大人たちのたくましい姿が私の記憶によみがえる。
稲が実り出すころになると、寒さが襲い霜がおりる。サイレンが鳴り響き、夜明けまで雑木を燃やす。町ぐるみ霜と戦う。そんな町に育ったことに感謝したい。
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